忘却の仕事術

システムエンジニアをとして、モバイルアプリを作成していて忘却について書いておこうと思う。

忘れることを前提にして仕事する

数分と覚えていられない

仕事をする上で、短期記憶は非常に重要ですが、同時に限界もあります。人の脳は、一時的に記憶しておくことはできますが、その容量には限界があり、すべての情報を保持し続けることはできません。この現実を前提に、短期記憶の制限し、忘れることを前提にして仕事を進めます。

Todoリストを使う

タスク管理の効率化 例えば、タスクがたくさんあるときに、「今やっていることを全て覚えておこう」と考えるのは非現実的です。代わりに、Todoリストにメモをして、頭の中で情報を保持し続ける必要はなくし、意識的に「忘れていい」と自分に許可を与えられます。この方法により、思考を整理し、今やるべきことに集中できるようになります。

Todoリストにメモするときに優先順位を意識してメモを並べ替えます。メモをすることで何が重要か、何を後回しにしても大丈夫かを自然に意識するようになります。次にやるべきタスクを自分の頭で思い出すことを繰り返すのではなく、一覧で確認する習慣を持つことで、必要なことに集中しやすくなります。

しかし、忘れることを前提にした仕事の進め方では、意図的に「今は覚えなくても良い」と考え、タスクが終わったらすぐに切り替えることで、脳をリフレッシュさせることができます。次のタスクに取り掛かるとき、前の仕事を「忘れる」ことは実は重要です。過去のタスクに引きずられると、思考が分散し、集中力が削がれます。仕事をスムーズに進めるためには、ひとまずその仕事を脇に置き、今目の前のことに全力を注ぐことが大切です。

今日やることを今日中に終わらせる

大きな仕事をそのまま一気にこなすのは、どうしても負担が大きく記憶を持続するのが難しくなります。対策はタスクの粒度は数分から30分程度の小さな単位で区切ることです。 私たちの脳は、一度に多くの情報を記憶しておくことが得意ではありません。特に、1時間以上続けて作業をすると、タスクから外れて別のことをし始めてしまう。そこで、タスクを30分より短い単位に分けることで、集中力を保ちやすくなります。この区切りは、比較的短いので「この時間内で終わらせる」と意識することで、脳も適度にリフレッシュしながら作業を進めることができます。

例えば、メールの返信や資料の確認、会議の準備など、どんな仕事も「30分より短い時間でできる範囲」に分けることが可能です。この「小さな区切り」を意識することで、次々にタスクをクリアしていく感覚が得られ、モチベーションが維持されます。

タスクを終わった後に簡単な振り返りを行うことも有効です。例えば、「この時間で達成したことは何か?」を確認することで、自分がどれだけ進捗したかを実感でき、次のタスクに向けた意欲も湧きます。また、振り返りをすることで、タスクの粒度が適切だったか、次回はどう改善すべきかが見えてきます。

タスクを30分より短い単位で区切り、着実に進めることで、「今日やること」がどこまでできるか予想しやすくなります。タスクの合計時間を計算すれば概ねの時間がわかるからです。ただし、8時間労働する時に8時間分積み上げずに不測の事態に備えて2割程度は余裕のあるスケジュールを取るようにします。大きな目標に向かって一気に進むのではなく、小さなステップを積み重ねることで、無理なくゴールに辿り着けるのです。また、この方法は、短期記憶に頼らずに進めるので、仕事が終わった後の達成感をしっかりと味わうことができ、次の日の仕事にもポジティブな影響を与えます。

忘れる、変わる、古くなる

サービスの仕様を答える必要が頻繁にあります。仕様を覚えておき、長期記憶は、私たちが過去を振り返り、未来を予測するための重要なツールです。しかし、この記憶は万能ではなく、様々な問題を抱えています。

最も一般的な問題は、忘却です。一度覚えたはずのことが、時間が経つにつれて思い出せなくなることは誰しも経験があるでしょう。これは、脳内の神経回路が変化したり、新しい情報が古い情報を上書きしてしまうためと考えられています。

記憶は、写真のように固定されたものではありません。時間の経過とともに、記憶は変化し、歪んでいくことがあります。これは、再構築と呼ばれる現象で、記憶を呼び出す際に、新たな情報や感情が加わり、元の記憶が改変ます。

正確に記憶していても時間と共に状況が変化していきます。状況が変化したのに前の記憶を覚え続けていると現在の状況と齟齬は起こります。

覚えたことを忘れる必要もある

記憶をしていても間違いや変化に追従できていないことはよくあります。時には、覚えたことを忘れて、覚え直す必要があります。一度覚えた情報が時間の経過とともに変わってしまうことを恐れたり、否定的に捉える必要はありません。それを自然なプロセスとして受け入れ、「もうこれは役立たない」と割り切って忘れることも必要です。

検索可能にする。ドキュメントを書く。

正確に記憶をし続けることが難しい以上、記憶をしておきたいことを検索可能な状態にする必要があります。すでにGoogle等で検索して出てくるようなものであれば、それに頼るのも良いでしょう。ただインターネットは更新されたり消えたりします。その情報が極めて重要なものなのであれば、自らそれを残しておくことも必要かもしれません。

仕事をする上であれば、関係者が多い場合はドキュメントを作りつつ仕事を進める必要があります。言った言わないということはよくあることです。誰もが忘れつつ仕事をしているので、合意した内容をまとめておくことは重要です。

ソースコードがドキュメントとする場合もありますが、これは経緯や意図、過去の情報がありません。最後の手段程度だと考えています。

完全に忘れる

失敗そのものをいつまでも覚えていると、新しい挑戦をためらったり、過去に縛られてししまいます。本当に大切なのは、失敗という事実ではなく、そこから学んだ教訓です。「なぜ失敗したのか」「次はどうすれば良いのか」という気づきを得たなら、失敗そのものを忘れても問題ありません。

成功もまた、心地よい記憶として私たちを捉えてしまうことがあります。「自分はこれができた」という自信につながる一方で、それが過去の栄光にしがみつく原因になることも。成功の喜びを何度も振り返るうちに、現状に満足してしまい、次の挑戦を怠る危険性もあるのです。成功の事実は忘れても、そこに至るまでの努力や工夫、戦略といった学びを覚えておけば、それは次の成功への土台となります。

「忘れる」ことは、過去を否定することではありません。それは、教訓という本質だけを持ち続け、不要な感情や記憶を手放すための行為です。失敗も成功も、人生の一部であり、そこから何を学び、どう活かしていくかが重要です。教訓を未来への力に変えるためには、過去の具体的な出来事ではなく、その中核となる知恵や気づきを大切にしましょう。